まあ、それはそれとして、持っていった本は帰りの飛行機&電車の中でドワーッと読みました。「裏庭」。著者は「西の魔女が死んだ」の梨木香歩。
児童文学風のファンタジーですが、心理学的な読み方をしても面白いし、子供の為というよりは、我々大人の中のインナーチャイルドの為の小説かな。痛いし、深いし、なかなかシニカル。
「不思議の国のアリス」のようにある日少女が異界に紛れこんで使命を持って旅をするんですね。その旅を通して少女が、自分を乗り越えるというか、自分と戦うというか、自分を受け入れる=大人になる・・・という話。全編を通して緻密に描いてあるのが「痛み」ですね。だいぶ痛い。
痛みというテーマは現代に生きる我々にとっても、一考を要するテーマなのかなって思います。
「癒し広場」という場所を通って来た少女に、賢者の婆さんが言う台詞。
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しかし、祭りのように癒し癒しと浮かれておったのう。(中略)
真の癒しは鋭い痛みを伴うものだ。さほどに簡便に心地よいはずがない。傷は生きておる。それ自体が自己保存の本能を持っておる。大変な知恵者じゃ。真の癒しなぞ望んでおらぬ。ただ同じ傷の匂いをかぎわけて、集いあい、その温床を増殖させて、自分に心地よい環境を整えていくのだ。
癒しという言葉は、傷を持つ人間には麻薬のようなものだ。刺激も適度なら快に感じるのだ。そしてその周辺から抜け出せなくなる。癒しということにかかわってしか生きていけなくなる。おまえはその服のおかげで傷に支配されずにすんでいるのだよ。
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この癒し広場ってのが俗にいう「スピコン」と呼ばれるスピリチュアルコンベンションみたいな場所なの。コンヴェンションていうか、実際は見本市だよね。スピリチュアルという言葉の真の意味から逸れたイベントだなあって私は思っちゃってるので行ったことはないのですけど・・・。巷にはヨーガのコンベンションてのもあるよね。ヨーガなんて自分でやる自分の修行だしねえ。見本市に出されるのは変じゃない?なんて言っちゃいけないの・・・かな??
癒し癒しと浮かれて、傷を舐め舐め温存し・・・ではなく、真の癒しとは、痛みを痛みとして経験すること、傷を生きること、つまり自分自身を丸ごと受け容れることでしかあり得ない、とこの本は語り、少女がそれをやり遂げるプロセスを描いている。良い本です。
それは簡単なことではないけれど、痛いーっともんどり打ちながらも、自分の核心に迫っていかねば。根性ですよ。根性がいるんです。ものすごい勇気のいることですが、少女テルミイが勇気の形を見せてくれます。
「私」は、大切な人とも、失った人とも、ちっとも離れていない!ということをテルミイは悟ります。痛みも哀しみも永遠ではない。永遠とは自分自身であるということを。
ヴェーダーンタだね。