撮影:Kamalesh Koki Yoshie
みなさまごきげんよう。
一冬を越えて、ふたたび東京でひっそりと暮らし始めたシータ万蔵です。
我ながら、すっごく遅ればせながらCDの話を書きたいと思いまして。
いろんなことが記憶の彼方にドンドン出荷(?)されていくので手が届かなくなる前に。
昨年製作したCD、その名も『Sita』を聞いてくださった皆様、ありがとうございます。このCD、細々ながら、いろんなところに旅してくれています。誰かの車の中、イギリスやらアメリカやら、スウェーデンやら屋久島の流れる景色の傍らで、その音がなっているかと思うと、ふふふ。私の個人的変態的趣味からすると、このCDの細々旅は醍醐味です。
が、しかし、個人的趣味のことは置いといて、作るだけ作ってホーチミン(放置すること)はよくない。(すみません!インドで忙しかったんです。汗。)再びシャバに戻ったからには、ちゃんとします宣言。
どういう顛末で、このCDが作られることになったかは以前お話しましたので、曲紹介を。
このお話が持ち上がった時、何をCDに収めるかを決めなければなりませんでした。
私は、ちまたではSivananda Yogaっていうのを教えている人とされているので、その道の人にわかるCDを作る、という選択もあったんです。
が、内輪っぽい世界よりも、広く皆さんに聴いていただけたら、ということでSivandandaしばりは却下。プロデュースして下さった岡野さんも「インドインドしていないものにしたい」とのことでしたので、ユニバーサルなものを目指しました。
世界が、あっちやこっちのみんなが、平穏でありますように、という思いを祈りとして、調和の司るヴィシュヌ神にまつわる歌ばかりを選ぶことにしました。もし次にチャンスがあるのであれば、今度はどっぷりSivanandaなCDを作ってみたいです。
というわけで、全曲解説!
①Conch Browing
吉祥のシンボルとし法螺貝で幕開けです。一昨年から、ヒロミダスと私の間でシャンク(=法螺貝=英語でコンチ)が流行ってまして、所構わず吹き鳴らすのでスワミジに怒られまくったのですが、そもそもこれはプージャ(儀式)の始まりに八方除けとして吹かれるもの。この流行りが次第にいろんな人を巻きこみまして、中学生マーキチに飛び火。私らオバハンが吹くよりも、これから世界を担っていく若者に、なんというか、希望の種を植えつけたくて、マーキチにお願いしました。
※あんなに怒られても諦めなかったヒロミダスはいまやプージャに欠かせない法螺貝吹きとなりました。
②Sri Ram Jaya Ram
インドの代表的な叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公ラーマを称えます。ラーマはヴィシュヌ神の7番目のアヴァターラ(化身)。ヴィシュヌは世界の平穏が乱される時に、様々な姿をもって顕れます。が、願わくば、私たちの見方が成長して、万物にヴィシュヌの化身を見ることが出来ますように。昔から好きなメロディーで〆にこれを歌ってサヨウナラってことが多いです。
③Radhe Radhe Govinda
ゴーヴィンダはヴィシュヌの八番目のアヴァターラであるクリシュナ神のこと。ラーマが人間として顕れてるのに対し、クリシュナは(人間の姿をとってはいるものの)神そのものとしての化身です。ラーダーはそのパートナー。ラーダーを呼びかけるとき、文法上の語形変化が起こってラーデーになります。私のお気に入りの曲。いつかノリノリのリズム隊と一緒にステージで演りたいです。
④Vithala
ヴィッタラというのはヴィシュヌの姿の一つ。英音訳の綴りに関してちょっと自信がないんですけど、インド 広しで言語も多く、地方色それぞれ強く、この綴りのミスはまあ良しということにさせていただく・・と。南インドの北のほうカルナータカとか、西インドの東の方であるマハーラシュトラで人気の神様です。途中から入ってくるサントゥール(百弦琴)。実は私のハーモニウムがものすごく宙ぶらりんなチューニングで他の楽器と合わせられない大問題が発覚しまして、サンプリングのサントゥールを私の楽器に合わせてチューンしていただいき、岡野さんが弾いてくれました。よーく聴いてください。遠くの方で不思議な打楽器たちの音色も!中近東っぽく仕上がっています。
⑤Hari Narayana
ナーラーヤナもヴィシュヌの別名ですね。④でも出てきくるHariという名も同様。HariはTaker、取り去る者です。何を取り去るかって、私たちの罪と穢れを取り去る素敵な泥棒。あかねちゃんと二人でレスポンス部分を何層か重ねましたが、自分がたくさん居るみたい、合わせ鏡を覗いているような不気味サウンドになりまして、急遽ハモることに。同じ周波数の声をいくつ重ねても、厚みは出ないんですって。この夜あわててコーラス隊を招集しました。これもインドっぽくなくて不思議な合唱団風。そして背後にはまた耳に新しい打楽器が。実は全ての曲に、違った打楽器が使われているんです。パーカッションはとにかく聞きどころです。
⑥Madhurastakam
マドゥラーシュタカムは、 インドの詩人 Sri Vallabha acaryaによる、クリシュナを讃える8つの詩篇です。題名の通りその詩はとってもスイートなんです。その唇は甘く、そのお顔も甘く、その瞳も、その笑顔も甘い・・・という、クリシュナのスウィートネスを詠っています。私がNYでトレーニングを受けた時の先生、東欧人のスワミジが歌って下さったメロディーで。もともとギタリストだった先生で、私はこの人のスウィートネスに当時とってもとっても救われたのですよ。そんな先生へ愛敬の意を込めて。そしてついに登場、タブラ!ようやくインドインドです。演奏して下さった広本さんは瑞々しい草花ようなたおやかで素敵な方でした。
⑦Yamuna Tira Vihari
ヤムナー川のほとり、木漏れ日が緑の中に輝いて、小さな、色とりどりの花たちが、足元で祝福している。鳥はさえずり、小さな動物たちも寛いで飛び跳ねています。そんな森の中にクリシュナの笛の音が、どこからともなく聞こえてくる。ああ、なんて麗しい世界なんだろう。あなたのブレッシングで、この世界が輝いています。というような気持ちで。みんなにも、あの甘露のせせらぎの音が聞こえるでしょう?
⑧Raghupati Raghava Raja Ram
偉大なる魂、インドの父ガンディージーのメッセージを。アンボリにいた時、小さなニキタにインドの国旗を見せると「♫ラグパティラーガヴァ」と判で押したように歌い出して可愛かった。ヒンドゥーの神様ラーマを称え、そして同時にアッラーの神を称えます。このCDのコンセプトとしてどうしても外せなかった曲です。以前ドバイでワークショップをした時に、これをチョイスしてすごく褒められたんですね。イスラム教徒もヒンドゥー教徒も、仏教徒も、キリスト教徒も、みんなで集ってこれを歌うことができました。名前はたくさんあるけど、神は一つ。っていうかこの世に神じゃないものなんてありますか?私たち日本人はわかっているはず。神をどうこういうのならば、全てが神です。
⑨Santih Mantra
ヴェーダーンタにおける重要なシャーンティマントラを十編唱えました。背後に鳴っているドローサウンドを、最初自分の楽器で弾いたんです。が、なにせ宙ぶらりんですからね、チューニングが。最終的にシンセでお願いしました。他の曲とチューニングが違うという掟破り。それでも、どうしても、岡野さんのネイティブアメリカンフルートをなんとかして入れてもらいたかったんです。だって木の笛のチューニングを変えるなんて、端っこをちょん切るしかないし、そんなの無理。本来、これらのヴェーダのマントラは節やリズムを合わせて歌唱するものではありません。ので、歌唱せずして岡野さんのフルートとコラボさせていただけたこと。すごい。感無量です。
そもそも、私がこの道に入ったのはネイティブアメリカンの儀式に参加したことを発端とします。その数週間は毎朝、真っ暗なうちに、この笛の音で目覚めていました。正直いうと、目立つところだけでも三箇所くらい、舌が固まって発音をしくじっています。不甲斐ないことこの上ない。が、これが今の私の姿。そのまんま受け止めよう・・・と。このCDに込めた祈りの集大成です。この祈りが届きますように。
9曲。計画をはるかに上回る盛りだくなCDになりました。
おっと、仕事にいかなくては。
今年初の日本語でのクラス。毎年緊張するけど、頑張ってくるよ。
CDのこと②はまた後で!