いやあ〜、告知業務を溜めに溜め込んだため、バッタバッタと更新してみましたが、たまには、いつも通りの独り言を呟きたいものです。
最近、ていうか昨日、歯医者に行って久しぶりに泣けた。痛くて泣いたんじゃないよ。
20年前からお世話になっている先生は女医さん。
今回、歯医者に行く勇気が出たのは、イギリス人の友人が旅の途中に大阪に寄って歯の治療をしていることを知ったから。連絡してみると「君も行った方がいい、いや行かねばならない」と背中を押された。
思えば20年前も、親友に付き添って貰ってようやく来院したんだよねー。
とにかく恐怖でさ。
ヤング時代に下手な歯医者にかかって、麻酔がまったく効かない状態で治療した、その痛みの記憶が残っているのよ。
20年前、ビビって硬直する私に先生は、
「ゆみちゃん(私の名前)!大丈夫、ぜったいに痛くしないから!まかせなっ!」
と言って、逆光の中、颯爽と、例のキーンッと唸る機械をかかげた。
さ、サムライ!
なんて男前!
「こ、こんなことを言ってくれる人が!もういい!この先生だったら、たとえ痛くても我慢する!」
とトータルサレンダーの境地に突入しまして、私は目を閉じて口を開けました。
ああ、信頼とは、こういうことなのか・・・。
左の一番奥の歯が、どエライことになって、7年ぶり先生のもとを訪れたら、なんとご健在で、ちゃんと覚えていてくれて、今も変わらずに男前で、凄腕で。
「あらー、懐かしい人が来た!ゆみちゃん、どうした?」
先生は、虫歯地獄の海を渡る小さな船の、船頭さんといったところか。
新しく入った助手さんに対応されている間、「あーここ虫歯。あーここも、ここも、ここも、あーたいへん!」と心で呟かれているのが手に取るようにわかって、私はやっぱり不安だった。虫歯をつくった罪悪感と。
しかし先生は、そんな不安と罪悪感を全て払拭する。
深刻ぶって脅さない。まずいな、とか、悪いなとか、負の言葉を一切口にしない。
どんな難局においても明るく、キリリとして、迷いを見せず、「任せろ!」オーラを出している。
先生は、良いとか悪いとか、そういうジャッジメントの外にいて、ベストな治療をする、瞬間、瞬間に命がけ、そして機嫌良く、真剣勝負、それだけ。
愛だー。
「愛」を分解すると「信頼」と「思いやり」だと、知り合いのおばさんが言ってた。
武器をひとつ、歯の研磨機にすげ替えた、聖母ドゥルガーを私は見ました。
多分、私のなりたい女性像というのは、先生みたいな人なんだと思う。
大人であるということは、どういうことか、という。
大人であるということは、責任を背負う覚悟を持つことだ。
20年前、先生は今の私と同じくらい、もしかしたらもっと若かったかもしれない。
だとしたら、なんなの、あのカッコいい40代。
そしていま、私も年を取ったし、先生も年を取った。
先生は相変わらずカッコよかった。
どうかずっとお元気でいて欲しい。