2013年4月26日金曜日

くらび日記1

4月24日(水)

シンガポールにお別れして、一路クラビへ。TTの下見もあるし例年通りチェンマイに行けばいいものを、いつぞやのタレントショーでサンディが読んだダライラマ14世の13のアドヴァイスが気になっていて、ここに来た。

「一年に一度は、今までに行ったことのない場所に出かけなさい。」

シンガポールから計ってみたら90分くらい。イミグレーションでひと悶着あったが依頼しておいた送迎の運転手にも無事に会えた。

ブッダガヤ-カルカッタ間のトラブルと疲労がトラウマになっていて、予防策に送迎をお願いしたのだが、よくよく考えてみるとタイなんだから、普通のトランスポーテーションで十分楽だった筈。1200バーツの送迎は目玉の飛び出るほど高い。インドがスタンダードになりすぎていて、わけが解からん。

私一人のためのマイクロバスで30分くらい走って小さな入り江で降ろされると、ほどなくしてロングテールと呼ばれるボートがやって来た。尻尾が長いのかと思ったら、長いのは舳先で、これはロングノーズでは無いのかと思う。




水平線に向かってボートが軽快に走り出すと全身に抱え持っていた緊張が溶けるような感覚。これだけで1200払っても甲斐があった、と思う。船旅は、メキシコのチーフ・オスカーのキャンプに行ったとき以来。あのときは8時間の船酔い地獄だったが、15分くらいなら何でもないし、第一、海が静か。マングローブの入り江に付くと、荷物は降ろされトロッコによって引き上げられていったが私は歩き。林に入る急な階段は殆ど梯子。


マネージャーの名前はヤンさんだったか、とても朗らかで的確かつ親切なのに感心した。チェックイン時間より二時間も早く来たのに間髪いれず、「一番眺めが素敵な部屋をとっておいたよ」と奥まったバンガローに通してくれる。


各コテージは海に向かって斜面に建っており、お互いの部屋が極力見えない造りで、メイドはお願いしない限り来ない。山の中の一人暮らし感があるのにインターネットはある。食事は外。



一通り掃除をし、二週間余の一人暮らし部屋をセットしたら安心したのか、人見知りの素性が頭をもたげてきて新たな緊張感がでてきた。昼寝から醒めたら4時で、まだ出かけられる時間だったが、誰にも会いたくないので夕食すらも我慢して部屋でYoutubeみたりして寝る。遠くで雷がゴロゴロ鳴っていた。



4月25日(木)

起きたら日がすっかり昇っていてガッカリしたが、それでも8時だった。人見知りムードがまだ続いており、食堂に下りていく勇気が出ない。昨日、だらだらしてしまった罪悪感もあり、そこから逃れるようにさらに引き篭もりたくなってしまう。

しかし、そうも言ってはいらない。勢いを付けて溜まっていた洗濯とシャワー、洗髪。ベランダは広く、ヨガや勉強が気持ちよく出来そうだが、塵が溜まっていたので雑巾がけ。

気を取り直して10時前に食堂エリアに行くと、お茶だけじゃなくて、セルフサービルのトーストがあって、お腹が減っていたので3枚も食べてしまった。食堂からの眺めの実に美しいこと。

午前中は生徒さんからの相談メールに返信。私にとってプライオリティーの高い大切な時間だし、一生懸命書くと実は時間がかかるのだか、自分は「一件しか」ということに拘って罪悪感を持っている模様。また引き篭もりたくなる。これでは益々いけないので、午後歩きにでてみた。宿の前の入り江は干潮で有明海みたいになっており、トラクターが走ったりして、「干潮時のボート送迎は出来ない」の断り書きに合点。

鍾乳洞のような道を抜けて隣のビーチへ。曇り空もあいまって海は青くなく普通の色。心持ち塩気が強い感じで暖か。同年代かそれ以上の人々と共にプカプカ浮いていると温泉のようで気持ちがいいのだが、やはり夢のような海も見てみたくなる。一人だし・・・と敬遠していたが気が変わった。滞在中ピピ島にも遊びに行こうと思う。




帰り道、適当に入った店で好物のココナツミルクスープを頼んだら、アッチャーナヒーンへー、ぜんぜんアロくない(美味しいをタイ語でアロイという)。どうしたものか。全てがインドより高くて気絶しそうなのに、この味ではガッカリ感もひとしお。


半年温存しておいた林芙美子の「放浪記」をチラチラ読みはじめる。あまりの美しい文章に感動。これは詩だ。文章としては挑戦的というか詩的でありながら、涙がでそうな率直かつ愛くるしい、愛しい文章であり、大事に少しずつ味わいながら読むことにする。





このローカルな場所でインド人を見かけて二度見してしまう。気のせいかとも思ったがあのチョビヒゲは間違いない。テイラー「アルマーニ」の主人に違いないと思う。さらにレストランの鳥かごにアンボリでよくみかけた「ブルブル」という鳥が入っていて、「あ!ブルブル、何してるのこんなところで!」と呟いてしまった。可哀相なブルブル。

どこにいてもインドは恋しい。今日のハヌマーンジャヤンティ(誕生日)に猿に出くわしたことはよかった。