2009年11月14日土曜日

みんなのQ&しーたのA 「カウンターポーズ」

 

 今年1月のTTC。一か月間、私は先生の端くれとして生徒さんに直接関わりつつ、また、同時に、傍観者として遠く離れて草葉の陰から眺めてもいました。星飛雄馬のお姉さんみたいな感じです。 笑いあり、涙ありの日本人チームでしたが、ラディカは特に、天の恵み(=試練!)を沢山与えられてましたね。毎日のように熱心に質問にきていた姿が印象的でした。彼女が自力で乗り越えていく姿に、姉さんは電信柱の陰でジーンとしたものですよ。そんなラディカが質問をくれたので、長い長い回答をこちらにも転記します。本っ当~に長いので要注意。 内容はやや専門的、指導者向けなので、目が疲れちゃう方はスルーして下さい。

Q. 先日、とあるヨガのクラスに行ってきました。そこで、深い後屈をしたあとすぐに前屈や子供のポーズをするのではなく、ねじりを加えてから前屈をした方がいぃと言われました。後で、質問したところ、はりがねをずっと前後に動かしていたら、ふにゃふにゃになって折れてしまうのと一緒だと言われました。それを言われて、納得したのですが、でも・・・シバナンダヨガでは、カウンターポーズをたくさん取り入れていますよね。私は、それはそれで、腰のあたりがのびる感じがしてきもちいぃんですが、シータさんは、どう思いますか?(中略)

まだまだ新米ですが、教えていると、いろんな疑問がわいてきます。これも与えられたことと思って頑張ります。




A. Om Namah Sivaya, Radhika お元気ですか?メールありがとう。すっごくうれしいです(笑)。東京もようやく寒くなり、私は部屋で小さく丸く、天井裏のネズミは大運動会。早速、私なりの回答を・・・。

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 シヴァナンダのシーケンスでは、しつこいバックベンド群の「かえし」(カウンターポーズ)として何をしてたっけ?ねじりのポーズだったよね。その後バランスのポーズを経て、立ち前屈をする。まさに「深い後屈をしたあとすぐに前屈や子供のポーズをするのではなく、ねじりを加えてから前屈」をしているわけです。このシーケンスは、解剖学的な見地よりもむしろ、ナディとクンダリーニに着目した流れだと思うのですが、解剖学的にもしっかり理に適ってしまっている。ほんと昔(!)のヨガって良く出来てると思います(怖いくらい)。ちなみに、後屈のあとでは必ず休憩のポーズ(うつ伏せなのでマカラアーサナ)で背骨をニュートラルに戻して次へ行くのもポイント。

 針金をグネグネやっていると、ある瞬間にポキッと折れる、これを金属疲労というのですが、人間の骨にも、これに似た疲労骨折というトラブルがあります。カウンターポーズでイキナリ疲労骨折した!という話はあまりないので(※背骨は関節が多いし・・・)、先生の針金のお話は、あくまでも例えだとは思うんだけど、いきなりのカウンターポーズは、確かに危険だと私も思っています。だからこそ、シヴァナンダヨガではアーサナごとに、シャバアーサナ、マカラアーサナなどの休憩ポーズを入れて、それから次のポーズに移行するわけです。また休憩ポーズでリカヴァーしたいのは、心臓や呼吸器よりはむしろ、筋肉・骨そして腱などです。(※太陽礼拝の後は逆に主に循環器系フォーカス。)

 例えばマッツィアーサナのあと、間髪入れずに頭を起こして首を伸ばす・・・なんてのは危険ですね。そのカウンターポーズをしたいなら、まずシャバアーサナで首を元の状態に戻してから行う。0 to 10 guradually が鉄則です。 -10 to +10 directly なんてのは絶対に絶対にタブー。

 これら休憩ポーズは皆が思っている以上に、すっごく大事。この私の暑苦しい思いを何とか伝えたい・・・、というわけで、すご~く変な例えをしますが・・・

 大阪を拠点に新幹線で日本横断旅行をしましょう。大阪⇔東京間、大阪⇔福岡間をそれぞれ仮に500kmとします。まず大阪から東京まで3時間かけて行きました。次は福岡に行きたいんだけど、東京から福岡までは3時間で行けないのよね。3時間かけて大阪に戻ってから、さらに3時間かけて福岡に行くしかない。

 普通の首の状態を「大阪」として、ハラアーサナで首を90度前屈した状態が「東京」、マッツィアーサナで首を90度後屈させた状態が「福岡」です。東京から福岡には、そう、直接行けないの。距離だけではなく時間のすっ飛ばしも出来ない。なぜなら肉体は未だ「時間と空間のある世界」に存在している為、否応なくその制限を受けるから。その時空の法則を無視することは出来ません。

 あるアーサナで腱や筋肉をうんと伸ばした(または縮めた)として、それら組織は、次の0.1秒で一気にカウンターポーズまで行けるでょうか?答えはNO。カウンターどころかニュートラルに戻ることすら不可能のはずです。これは昨日の三日月が、今日いきなり満月になることが無いのと同じくらいの定説。私達が肉体を持って生れてきたということは、その肉体を空間(物理)的・時間的な制限のもとに置くということ意味します。(だからこそ叡智をもって意識を確かなものとし、逆に、これら制限から自由であることの意味を知ることが出来るのよね。)

 ポーズとポーズの間のシャバアーサナ(またはマカラアーサナ)では時間・空間に完全に身を委ねましょう。そして体の声を聞いてみましょう。そこで骨格が、腱が、筋肉が、果ては内臓までもが「みよ~ん」と動いて「じわ~ん」と元の状態に戻って来るのをしっかり観察します。ポーズが深ければ深かったほど、この効果はハッキリと味わえるよ。新幹線でいうと移動距離が大きいってことだから顕著なのです。そして驚きなのは「元の状態」どころか、「さっきよりもっと良い状態」に戻ってくること。「えっ、体って凄い!」って思う。ちゃんと本来あるべき姿を知ってるんだね(これに比べたら頭って意外とバカかも・・・)。

 さて、これが味わえたら次のステップへ。この効果に必要な時間は個々の体の質によって違うので、クラスでは生徒さんそれぞれの気をしっかり読むこと。私は必要に応じて「〇〇さんはまだ休み!」と個別に指示したりもします。とはいえポーズの間のシャバアーサナは長くても2分まで。長すぎると温まった身体が冷めて、不活性な状態に戻ってしまいます。

 それからお母さんの腰痛だけど、後屈の時に腰椎ばかり反っている可能性が高いのかも知れません。後屈では全ての脊椎が同じピッチで反ることが望ましい。でも、腰椎は大きくて大雑把だから角度を稼ぎやすいの。特に仙骨と腸骨の間の関節が緩むと骨盤が前傾し、すでに腰だけ反った状態になってしまいます。この仙腸関節は大腿骨が内旋した時に緩むので、コブラの時にお母さんを盗み見て下さい。かかとが開いて、両足ホッタラカシ君になってないかチェック。開いてたら「かかと閉じる、ひざも閉じる」で割り箸のような足にするように。これで腰の不要な反りがブロックされ胸を開きやすくなります。仙骨の上をギューッとマッサージされているような圧力を感じたらビンゴなんだけど、この圧力がまた気持ちいいのよ。コブラは本来、腰痛予防に最高なポーズですが、やり方を間違えると腰痛になるので注意。
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  ちなみに両手は上体をリフトアップする為にあるのではなく、背骨を前方に引き延ばし、椎間に隙間をつくるサポート役ってこともお忘れなく。掌でマットを腰の方にひっぱるようにしながら、背筋を使って上体を巻き上げていきます。絶対に反りより伸び優先。とにかく背骨の距離を稼いで、背骨の中に新幹線的スピードを感じて(どの方向に走っているかは分かるよね?)ありえないくらい長い背骨になりましょう。

  とても良い質問をありがとうね。疑問を持つといのは、指導者の成長にとって大変重要なこと。それを思いやりに繋げていくのです。生徒さんに無駄な怪我をさせる機会を少しでも減らすように。教科書などの少ない情報をそのまま出力してれば先生としてOKかというと、そうは問屋が卸さないのよね。実際のところ、自分が経験したことしか生徒さんには伝わらないからです。体験ではダメだよ。経験しないとダメなの。消化を経て血肉となってこそなのです。だから「なんで?なんで?」のなんだろう君になってね。こんどの奈良WSでは神戸による時間が無さそうだけど、いつか絶対行きたいです(20年前に行ったっきり・・・)。
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お互いどこにいても、元気で、楽しく過ごそうね。次に会う日を楽しみにしつつ・・・。

愛をこめて
Sita