【1日目:到着】
19:00 少し前、丸々半日の移動を経て、ようやく辿り着いたゲストハウス。
路肩にバイクを停めていると、玄関からキョトンとした男性が顔を出した。
「オーナーさん、お世話になります!」
ご僧侶でもあるオーナーのお爺さんですな、お若い。
いや待てよ、スキンヘッドだけど、爺さんというには若すぎないか?
そこに背後から「あー、着いた?」
本物のお爺さんが近づいてきました。
オーナーに女子部屋に案内して貰いながら四方山話。
お坊さんとヨーガの先生、話が合うもんで、椅子に腰掛けて長いことお喋りしました。
年齢を尋ねると太平洋戦争の開戦前のお生まれとな。
えー!かくしゃくとして年よりもずっとお若い。
5歳の時に島が爆撃されて内地に渡り、再び戻ってくるまでの長い人生のお話を聴きました。
オーナーをお見送りした後、台所で晩御飯。
今度は先ほど出迎えてくれた先客のAさんとお喋り。
私「先程は失礼しました。若いお爺さんだと思って衝撃を受けましたよ!」
A「まだお爺さんじゃないよ(笑)。こちらも他にお客が来ると知らなかったから失礼しました。」
ここはドミトリー型のゲストハウス。
「現在感染症対策で一人一部屋」と案内されているところ、私もAさんも勝手に「一軒まるまる独り占め」と勘違いしていたのでした。
お互い、滞在期間中よろしく、とご挨拶。
A「しかし長話だったね。何喋ってたの?」
私「オーナーの人生のお話を聞いていたんですよ。こうで、こうで、こう。
こんなに小さな罪なき島を空爆するなんてどうかしてますよ。」
A「本当にね・・・。そっかそういう人生だったのか・・・。」
私「あ、それと、オーナーは我々のチェックアウト前に東京のお医者さんに行くので、諸々よろしくとのことです。あとAさんが帰る日にこの家にWiFiが付きます。」
A「あなたすごいなっ。短時間でそこまで情報を引き出すとは!」
私「情報を引き出すなんて人聞き悪い。人生と平和について語り合っていたんですよ(笑)。」
A「若い女性にはフレンドリーなのかな。」
私「若くないですって。私が聞き上手なんですよ(笑)。」
A「バイクはどうしたの?」
私「大島からフェリーで連れてきました。地図も読み込んでたし、足が無いとどうにもならないように見えたんで。あ、来るときに猪の家族に会いましたよ。」
A「え!どこで?いいなあ。」
私「港から右折して割とすぐのとこです。」
A「バイクで来たのは正解。島に借りられるバイクが一台もなくて、三日間暇でどうにかなりそうだったよ。暇すぎて宿のカヤックで遊んでいたら、集落中の人が心配して騒ぎになっちゃって、オーナーにパドルを取り上げられちゃったのよ。今日レンタカー屋が、修理に出してたのが一台あったことを思い出してくれて、ようやく移動手段を得たの。明日はバイクでどこに行くの?」
※カヤック禁止令の話はまた後で書きましょう(笑)。
私「とりあえず知人に勧められた実久に行こうかと・・・」
A「実久!今日行ったら凄く良くてもう一度潜りたいので、明日でよければ案内するよ。」
私「じゃあ、合流させていただきます!」
Aさんは海に魅せられた人。
とある国の海辺に拠点を作ろうと動いていたところ、コロナ騒動が勃発してしまい、目下休みの度に国内あちこちの海に出向いてるそうです。
潮の満ち引きを計算し、翌朝の出発時間を決めてお開き。
広縁付きの女子部屋は、田舎の爺ちゃん婆ちゃんの家みたい。
私は、波の唄を聴きながら泥のように、眠りの底に沈みました。
ふふ、明日はビーチ!